信仰を伝える

150周年記念メッセージ

横浜天主堂献堂・日本再宣教150周年を記念して
〜交わりとしての教会をめざして〜
横浜教区長 ラファエル梅村昌弘司教
横浜教区長 ラファエル梅村昌弘司教 カトリック横浜司教区 日本の開国を見据え、教皇庁は1846年に日本の再宣教をパリ外国宣教会に一任します。その2年前から再宣教準備のために琉球に滞在していたテオドール・フォルカード師が日本の初代教区長に任ぜられ長崎に来日しますが、禁教令のため入国できませんでした。その後、1858年に欧米5ヵ国と修好通商条約が締結され、翌年、開港された横浜に設けられた居留地に新たな教区長に任ぜられたプリュダンス・ジラール神父がフランス総領事付通訳兼司祭として来日し、3年後の1862年に横浜天主堂が献堂されました。開国後初の天主堂はその後の日本における再宣教の拠点となりました。

 横浜天主堂献堂をもって始まった日本の再宣教から150年を経た今日、日本における更なる宣教の務めがわたしたちには課せられています。このことをふまえ150周年にあたっても司教就任以来の標語「交わりとしての教会をめざして」をもって記念することにしました。なぜ、今、「交わりとしての教会をめざして」なのか、この機会にもう一度ふりかえっていただきたいと思っています。

 近年のシノドス(世界代表司教会議)はすべてキリスト降誕二千年を祝う大聖年の準備のため、またそのしめくくりのために充てられて来ました。第7回から第10回までの通常シノドスでは、教会の構成員である信徒、修道者、司祭、司教、各々の固有の召命と使命についての考察がなされています。シノドス後その都度、使徒的勧告というかたちで教皇文書が発表され、『信徒の召命と使命』、『現代の司祭養成』、『奉献生活』、『神の民の牧者』の表題をもって邦訳されています。信徒について取り扱われた第7回通常シノドスの2年前、1985年には第二バチカン公会議閉会20周年を記念して臨時シノドスが開催され、「第二バチカン公会議の再確認」が行われました。その際「交わりとしての教会論は、公会議の諸文書にみられる中心的かつ基本的な概念です」という重要な指摘がなされています。使徒的勧告『信徒の召命と使命』(19項)でもそのことが言及されており、その後のシノドスで論議された信徒、修道者、司祭、司教、それぞれの召命と使命はすべて「交わりとしての教会」という教会理解をもって、またその枠組みの中で論じられています。「交わりとしての教会」の交わりの源泉は聖体にあります。そこで第11回シノドスでは「聖体 教会生活と宣教の源泉と頂点」いうテーマが掲げられ聖体について話し合われました。聖体と大聖年との関係については、前教皇ご自身が『紀元2000年の到来』の中端的に語っておられます。「紀元2000年は、まことに聖体を中心としたものになるでしょう。二千年前、マリアの胎内で人となった救い主は、聖体の秘跡において、神のいのちの源として、人類に自らのいのちをささげ続けています」(55項)。聖体は感謝の祭儀をもての秘跡ですが、その祭儀の中でわたしたちは「聖体」と同時に「神のみことば」をもって霊的に養われています。ここから2008年開催の第12回通常シノドスのテーマ「教会の生活と宣教における神のことば」の由来も理解できるのではないかと思います。教会もまた聖母マリアに倣って「神のみことば」を宿し、生み育て、この世に送り出さなければならないのです。

 今年2012年10月に開催された通常シノドスのテーマは「キリスト教信仰を伝えるための新しい福音宣教」でした。10月7日シノドス開催にあたっては「新しい福音宣教のためのミサ」(Pro nova evangelizatione)がささげられました。教皇ベネディクト16世は前任者のヨハネ・パウロ二世教皇の意思を継いで過去二回のシノドスを開催しています。二千年期から第三の千年期への橋渡しの役割を果したヨハネ・パウロ二世教皇は自ら主導なさったその準備をして「第三千年期の初めにあたって…教会が新たな福音宣教への情熱をもって歴史の海の沖へこぎ出すことを求めたのです」(回勅『教会にいのちを与える聖体』6項)と述べておられますが、今回の「新しい福音宣教」というシノドスのテーマもまさに前教皇の言葉を受け継ぐものと言えるでしょう。

 わたしたちの横浜教区も全世界の教会とともに「交わりの教会をめざして」歩んでいます。そして共同(協働)宣教司牧という「すべての信者の交わりという教会の本質を実現するための制度」をとおして(司牧書簡『横浜教区における改革の基本方針』8-10頁)、神の民とされた信徒、修道者、司祭がそれぞれに与えられている固有のカリスマを活かし合いながら福音宣教という教会の使命をともに果して行こうとしているのです。

 150周年にあたり禁教下にあって再宣教のパイオニアとなった先人たちの宣教への熱い思いをわたしたちも受け継いでゆきましょう。新しい千年期を迎え、ヨハネ・パウロ二世教皇は次のように呼びかけられました。「シモンと仲間たちはイエスのことばに信頼して網を降ろしました。すると『おびただしい魚がかかり、網が破れそうになった』(ルカ6:5)のです。沖に漕ぎ出しなさい〈Duc in altum〉! わたしたちのために、きょう、このことばが響き渡ります」。(使徒的書簡『新千年期の初めに』序文1項)